ただ愛してるだけ
でもいい仕事を貰えると、もっともっとと思ってしまう。

この性格のせいで、前の彼とも結婚せずに別れてしまった。

完全なる、私の負けだった。

『仕事と俺、どっちが大切なの?』

その質問に、”あなた”だと答えられなかったのは、その時受けた仕事が、楽しくて仕方がなかっただけじゃない。

彼との愛を育む時間を、怠ったのだ。


「なあに?また悩み?」

律子さんは表情だけで、私の事が分かるようだ。

良い意味でも、悪い意味でも。

「結婚の事を考えているんでしょ。」

私は、返事をしなかった。

「三十路を過ぎれば、結婚の事を考えるのもよく分かるわ。でもね、今はよして。せっかく売れているんだから。」

律子さんの最近の口癖。

”せっかく、売れているんだから。”
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