ただ愛してるだけ
『そんな……』

電話の向こうの慶人君は、がっかりしているようだった。

『どうしても、ダメなんですか?』

私の目から、涙が出た。

『夕陽さん……』

切ない呼びかけに、思わず”本当は別れたくない”と言ってしまいそう。

「ごめんなさい。」

それしか、言えなかった。

『もう、決まった事なの?』

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

電話をしていたソファの前で、丸くなった。

『分かった。』

慶人君のその一言で、電話は切れた。


「ごめんね。慶人君。」

もう謝るしかない。

本当は好きで好きで、たまらない。

このスクープだって、二人で乗り越えたかった。


でも、やっぱり年の差って、出るんだね。

三十路を過ぎている私は、慶人君の為に、引き下がるしかないんだ。
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