ただ愛してるだけ
「ねえ。どうして、別れたの?」

律子さんの言葉は、時に胸に刺さる。

「やっぱり、自分の人気を落とさないように?」

私は答えなかった。

「それとも、相手のスペックを考えたの?」


あー、うるさい。

人気だの、スペックだの。

恋愛にそんなの、必要ないでしょ。


「強いて言えば?」

「ただ、愛していただけよ。」

律子さんは、チラッと私を見た。

「愛してるから……別れたの?」

「ええ、そうよ。」

静かに、車のエンジン音がする。


「バカね。」

「そうね。」

律子さんは、たまにきつい事を言う。

「愛しているなら、どうしてこの困難を、二人で乗り越えなかったの?」

「それこそ……律子さんが、一番知ってるでしょ。」

それ以上律子さんは、私と慶人君の事を、言わなかった。
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