ただ愛してるだけ
翌日も、撮影だった。

世間一般には、慶人君との仲は『仲のいい後輩の一人』と言う事で収まった。

慶人君とは、あれ以来連絡を取っていない。


虚しい。

こんなはずじゃなかったのに。


「夕陽さん!何、ぼーっとしてんの!台詞!」

「はい!すみません!」

慶人君の事で茫然としている暇はない。

今は仕事なんだから、きっちりしないと。


そんな時だった。

周りがわぁーっと、歓声を上げた。

「きゃあ!花束似合う!」

「スーツ姿、カッコいい!」

スタッフの声に、後ろを振り向いた。


そこには―――――――

あの慶人君がいた。


「夕陽さん。」

スーツ姿で、花束を持って、慶人君は私の前に現れた。

「慶人君……」

周りがシーンとなる。


みんな知っている。

噂になった二人だって事。
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