ただ愛してるだけ
そんな事を思っている間に、車は撮影現場に着いた。

「撮影、頑張ってね。今クールの優秀作品候補って言われているんだから。」

「はーい。」

適当に返事をして、車を降りた。

視聴率とか、名誉とか、そんな事も大事だけど。

もっと、大事な事がある。

この仕事が好きか、どうか。

残念だけど、このドラマは脚本を読んで、一番に面白いと思った作品。

こうして私の恋愛は、また一つ、遠ざかっていくのだった。


そして、翌日。

律子さんは、こんな事を言い始めた。

「夕陽。今日、帰りが遅くなってもいい?」

「いいけど、どうして?」

撮影の合間に、律子が顔を出すのは、珍しい事だった。

「例の司会の件なんだけど、もう一人の相手が、遅くにしか時間が取れないんですって。」
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