あなたの隣で ~短編集~
これで、楽になれる……?


この屋上から飛び降りれば、いじめからも解放される……?


誰も、助けを求める私に見向きもしなかった。


こんな辛さからももう、開放されるんだ。



 両手を広げて、体が前に傾いた。


終わる。


そう思った瞬間。


「バカ野郎!!」


怒りに満ちた声が聞こえたのと同時に、私の左腕が強く引かれた。


誰……?


屋上に倒れ込んで、私の腕を引いた人を見ると知らない男の子だった。


なんで?


なんで私を助けたの?


「お前何やってんだよ。なんで死のうとしてんだよ。このアホ!」


私を怒鳴りつけてきた誰だか知らない彼の目は悲しみに染まっていた。


なんで、知らないはずの私のために悲しむことができるの?


私の頭の中はたくさんの「なんで」でいっぱいだった。


「生きてて良かった……」


私が呆然としていたら、彼が私を抱きしめた。


彼の手は……いや、体は、これでもかと言うほどに震えていた。
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