星と太陽に魔法の歌を
それ以降、美依の声は聞こえない。美影は、目の前の光景をじっと見つめた。不意に美影の目の前が真っ暗になり、景色が変わる。街で晴之は巨大な悪霊と対峙していた。

(ここ、魔法学校の近くにある森だよね…?)

美影は、辺りを見渡しながら思った。街並みは違うものの見覚えのある地形に場所を特定することが出来た。

「どういうつもりなの?人間に手を出すな!!」

晴之は悪霊に向かって叫ぶ。この悪霊は、色々な人間に取り憑いて自我を失わせ、暴れさせ続けていたのだ。それを封印させるために晴之は、地上に降りて来ていた。

「東西南北の守り神よ。四方を結び、罪重き者を処せ」

晴之が唱えると、悪霊は近くにあった封印石の中に入っていった。晴之はその石の上に御札を貼り付けると、端の方に置いた。封印石は、神様にしか見えない石なのだ。

「……後は、姉上に任せるか…」

そう言って晴之は、その場から消える。その瞬間、美影の目の前が真っ暗になった。

次に美影の目に写ったのは、悲しそうに晴之を見つめる由美と美依の姿だった。

「姉上、今から約18年後に会えるかな?」

「うん。会えるよ。私から会いに行くけど…きっと私たちのことは誰か分からないんだろうね…」

晴之は、今日が転生をする日なのだ。

「…そうだね。でも、影光とは同級生になれるから嬉しいかな……」

晴之は悲しそうに微笑み、転生した。その笑みを見た美依は泣き崩れた。それを見た由美も泣き崩れる。

(……もし、おじいちゃんの生まれ変わりが僕だとしたら、晴之さんの生まれ変わりは――)

美影がそこまで考えた時、美影の目の前が真っ暗になった。
< 106 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop