星と太陽に魔法の歌を
僕は、バタッという誰かが倒れる音を聞いて近寄った。そこに倒れていたのは――千晴だった。
…な、何で千春が…?…あ、千晴から悪霊の気配が。とりあえず、保健室へ運ばないと。でも…。
僕は、千晴を抱え上げると魔法を使って姿を消す。そして、印を結んだ。
「天地を縛り付ける者よ。今、我の前に姿を現れせ」
千晴の中から悪霊が出てくる。僕はためらいもなく御札を悪霊に貼り付けると、千晴を抱えたまま保健室まで行った。
俺はゆっくりと目を覚ました。俺は、保健室のベッドで横になっている。辺りを見渡しても誰も居ない。それに俺は首を傾げた。
…そう言えは、体が軽くなったような…。
しばらくベッドで寝転がっていると、保健室のドアが開き、保健室の先生が入ってきた。
「あ、千晴くん。気がついた?…深冬くんが千晴くんを運んで来てくれたんだよ?…無言で無表情だったけど。深冬くんは、千晴くんをベッドに寝かせると足早に去って行ったよ」
保健室の先生は、そう言って俺を見つめた。
僕は、保健室を出ると視線を少し下げて歩いていた。ふと顔を上げると、美影が立っている。窓から入ってきた風が、頬辺りまで延びている美影の横髪を揺らした。美影の大きな目が僕を捉える。
「…深冬、何で苦しそうな顔をしているの?」
「何でもないよ」
僕は笑って誤魔化す。しかし、美影は僕を見据えながら「…嘘だよね」と普段よりも少し低めの声で言った。
「…はぁ。何でもお見通しか…」
「僕は、深冬の幼なじみだからね」
「全く…」と深いため息をつくと、美影の腕を引いて魔法を使い、屋上に移動した。屋上から見える桜が美しく輝いている。