星と太陽に魔法の歌を
僕は、過去を話すと言ったものの数週間が経った今も千晴には過去を話せずにいた。それでも千晴は、毎朝合流地点に立っている。僕の苦しさは増すばかりだ。
今日、僕は授業中に倒れた。とても体が重い。霊が僕に取り憑いているのか…。意識はあるが、体が動くことを許さない。
ふわりと体が浮いた。僕は誰かに抱え上げられたらしい。
「俺が深冬を運びます」
僕は、うっすらと目を開いた。僕の視界に映ったのは――隣のクラスの千晴だった。
僕の意識は、ここで途切れた。
俺は、霊の気配を感じて、霊を払っていて受けずにいた授業に戻るふりをして美影たちのクラスを通ると、俺の視界に倒れている深冬の姿が映った。俺は慌てて深冬に駆け寄り、深冬を抱え上げた。
「俺が深冬を運びます」
そう言って、魔法をかけて姿を消した。こうしないと、安心して悪霊を払えないからだ。俺は、歩きながら印を結ぶ。
「天地を縛り付ける者よ。今、我の前に姿を現せ」
俺は、深冬から分けてもらった御札を深冬の中から現れた悪霊に貼り付けた。
…分かってるんだよ。あの時、俺の体が軽くなったのは、深冬が俺の中にいた霊を払ってくれたことぐらい。…だから、今度は俺が霊を払う番。
俺は深冬を保健室のベッドに寝かせ、しばらく深冬を見つめていた。
「…深冬が何に苦しんでいるのか、何に悩んでいるのか、何があったのかは分からない。けれど、俺は深冬を嫌ったりしないから。深冬が『友達じゃない』と思おうと…俺は、深冬を友達だと思っているから」
俺は、そう言い残して保健室を後にした。