星と太陽に魔法の歌を
2種目めは、美影が出る「浮遊魔法競走」だ。美影は、魔法術の天才で特に浮遊魔法を得意としているのだ。これ程美影にぴったりな競技は無いだろう。
スタートの合図が鳴ったと同時に、美影たちは空へと舞い上がった。魔法で書かれた線に沿って飛んでいく。先頭を飛んでいるのは、大体の僕と同じクラスメイトが想像していた通り、美影だ。
浮遊魔法で出せる速さは、自身の魔力と体の軽さによって変わってくる。美影は、魔法術では氷翠と負けないぐらいに魔力を持っており、体も軽いので、この学年最速なのだ(氷翠も美影と同じ速さまで加速できる)。
最初にゴールしたのは――誰もが予想していた美影だった。美影は、ゴールすると勢い良く地面に崩れ落ちた。僕と千晴は、美影に近寄ると先に美影の様子を見る。美影の顔が赤く、苦しそうだったので美影の頬に手を触れてみた。
普段よりも熱い感覚が皮膚に伝わった。
…熱あるじゃん!一応、念のために…。
僕は、僕自身に魔法をかけて印を結んだ。いつも通りの言霊を唱える。
「天地を縛り付ける者よ。今、我の前に姿を――」
――僕に気づいてよ。お願い…。お願い、僕を払わないで!
現せ、と言おうとした時、美影にそっくりな声が頭に響いた。魔法を解き、印を解く。
……さっきの声、美影?…違う。――美影の双子の弟、英太の声だ。でも、何で英太の声が?