星と太陽に魔法の歌を
「英太くん。久しぶりだね…聞きたいことがあるんだけど」

朔さんは、真剣な顔で僕を見つめた。僕は、無言で朔さんを見る。

「氷翠から話を聞いた時、疑問に思ったことがあるんだ。なぜ、美影の双子の弟だって言わなかったの?」

「……美影自身が僕のことを話したくないかも知れないから。それに、僕のことを話すのは美影本人の方が良いと思っただけだよ」

僕は笑みを浮かべ、皆を見た。望さんは、何かを考え込んでいる。

「深冬、俺と琥白は教室に戻るわ」

千晴は、時間を見て言った。深冬は「分かった」とうなずく。千晴と琥白は、その場から姿を消した。

「深冬は、行かないの?」

僕が問いかけると、深冬は「うん。今回はサボる」と真顔で言った。

…美影もたまに授業を受けずにサボってたなぁ。僕、生きたかった。生きて、美影のように幸せになりたかった。でも、美影が幸せならそれで良い…でも、でも……。

「英太?落ち着いて」

深冬が僕の頬に手を添えた。僕は、知らないうちに泣いていたらしい。

…泣くってこんなのだったっけ?生きていた時、僕は泣けなかったから良く分からない。昔は泣けたんだけどな…。

僕は、美影のように泣けなかった。多分、美影の方が辛いのに僕が泣いたらダメだ、という思い込みから泣くのを我慢していたら泣けなくなったのだと思う。

僕は、12年振りに泣きじゃくった。
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