星と太陽に魔法の歌を
翌日の放課後、千晴が若竹(わかたけ) 氷翠と美影を連れてきた。僕は後ろを振り返りながら無表情で千晴たちを見ていた。今、僕がいるのは人気のない場所。
「…あれ、深冬?どうして?」
美影が首を傾げる。僕は「…千晴に居るように言われたから」と表情を崩さずに言った。
「…美影、昨日から体の調子はどうなの?」
「…大分楽になったよ」
僕は無言で、昨日まで美影が付けていた首飾りを手に持ち、美影に見せた。飾り部分は――真っ黒だ。
「これが何を意味しているか分かるよね?」
美影は、僕をじっと見つめ深いため息をついた。
「…やっぱ凄いね。本当は――」
突然、美影の体が崩れ落ちた。簡易の首飾りが割れ、欠片が地面に落ちた。…やっぱり無理をしていたのか。
「美影!?」
氷翠が美影に近寄ろうとした所を、僕が氷翠に魔法をかけて動きを封じた。
「体が…動かない…?」
「ごめん。少しの間、動きを封じさせてもらうよ…さて、姿を見せても良いんじゃないかな?」
僕は倒れた美影を見つめ、語りかけた。強い霊気が僕の頬を撫でる。
『良く分かったな…神の使いよ』
僕は無言で悪霊と向き合った。そして、「…神の使い?何それ」と言い放ちながら御札を投げつける。悪霊は、御札とともに散っていった。
氷翠にかけた魔法を解いた僕は、美影を抱かえあげた。千晴は「…俺と深冬は――」と説明を始めた。そして、美影と幼なじみであること、美影は強い霊感を持っており、霊に憑かれやすいこと、この首飾りのことを話した。
「氷翠も美影と同じ体質なんだ。だから、この首飾りを渡しておくよ」
千晴が氷翠に首飾りを渡した。氷翠が首飾りを受け取り、首にかけた。氷翠は「ありがとう…」と言うと、心配そうに眠っている美影を見つめた。
「とりあえず、美影を、美影の家に運ぶか…心配は要らないから…また明日ね」
僕は魔法を使い、姿を消す。そして、美影の家に向かって歩き始めた。