星と太陽に魔法の歌を
翌日の朝、僕は千晴と一緒に通学路を歩いていた。僕の少し前に、見慣れた後ろ姿が。…琥白だ。僕は、気配と足音を消して琥白に近寄った。
「おはよ!」
僕が声をかけると、琥白は驚きながら後ろを振り返った。
「…おはよう」
琥白の隣にいた少女は、僕を見ながら驚いている。千晴は、僕を苦笑しながら見ていた。
「えっと…」と少女が首を傾げた。
「僕の名前は…神城 深冬!美影の幼なじみで、転校生なんだ」
「わ、私は…紅月 瑠梨(あかつき るり)。もしかして…琥白たちと同じクラスの?」
僕が「そうだよ」とうなずくと、千晴が何かに気づいたのか僕の体を横から押した。僕はよろめきながらも何とか立て直し、ふわりと塀の上に飛び上がった。
「…千晴。助かった」
僕が立っていた所には――1本の刀が落ちていた。刀からは、悪霊と同じ力を感じる。千晴は片手で印を結び、結界を張り巡らせた。
…そのまま動くなよ。
僕は制服の内ポケットから御札を取り出し、片手で印を結ぶといつもの言霊を唱える。
「天地を縛り付ける者よ。今、我の前に姿を現せ」
刀の柄に手をかけた悪霊が現れた。僕は御札から手を離す。御札は吹いた風に揺られ、悪霊の元へと落ちていく。
千晴が張った結界に御札が触れ、御札が帯状に伸び、悪霊と刀を縛り上げた。この結界は霊力に反応し、霊力が入っているもので、結界内にいるもの(悪霊に限る)を縛り上げることが出来る。
「…かかったね」
千晴は印を結んでいた手を解き、結界も解いた。僕も千晴に続いて印を結んでいた手を解いた。刹那、御札とともに、悪霊と刀は光に包まれて消えていった。
悪霊が武器を持っていた場合、武器も浄化しなければならず、一気に浄化するには千晴とこのように連携を取っている。
「…かっこいい」
琥白が僕と千晴を見ながら呟いた。僕は、瑠梨に説明をしがてら、琥白に千晴のことを紹介した。