恋する耳たぶ
こんな私と一緒にいて、恥ずかしかっただろうな。
もう、会ってくれないかもしれないな。
じわっと涙がにじんできて、私は足を止める。
「紬未ちゃん?」
心配そうに言う匡さんの声を聞いても、顔を上げることができない。
「今日は、ごめんなさい……」
「…………。」
「紬未ちゃん」
匡さんの声が、さっきと違った方向から聞こえた。
目を開くと、しゃがみこんで、私の顔をのぞきこんでいる匡さんがいた。
「次はどこ行こっか?」
「…………え?」
「今日も楽しかったけどさ、俺、もっといろんなとこ行きたいし、いろんなこと話したいな。紬未ちゃんと」
驚いて、見開いた目から、溜まっていた涙がぽろり、と落ちて。
泣き笑いの私は、嬉しさが爆発して、匡さんの腕に抱き着いた。
また、一緒にあのお店に行こうね。
もうちょっとあったかくなったら、あの素敵なテラスに座って、一緒にコーヒーを飲もう。
また今度、の約束ができる関係になれたことが嬉しくて。
ふふふ、と、私が笑うと、匡さんも笑った。
またね。
また、今度。
こうして一緒に笑ったり、話したり、しましょうね。
私はそっと、匡さんの素敵な耳に、ささやいた。