恋する耳たぶ
「あの……久しぶりのお休みなのに、大丈夫……ですか?」
『ん?』
「こんな時間までお仕事で、疲れちゃってるんじゃないかなって……その、休んだりしなくて大丈夫ですか?」
だんだん小さくなっていく声に気づいたのか、匡さんは、ふふっと、小さく笑った。
耳元で聞こえた息遣いに、心臓が跳ねる。
『休みだから、だよ』
「え?」
『休みだから、紬未ちゃんと会うんだよ』
笑みを含んだ声が、どことなく甘く響いて、私の頭から足の裏までを串刺しにしたように貫いた。
『明日、大丈夫なんだよね?』
「……は……い……」
『じゃあ、ごはんでも行こう。でも、そうだな。確かに疲れてるかもしれないから……ちょっと遅めでいいかな?』
「…………はい……」
この間のカフェの最寄り駅で待ち合わせしよう、と、匡さんはまた、甘くささやくように言った。
『じゃあ……おやすみ』
「お、おやすみ……なさい……」
一呼吸おいた後で、プツッと通話が切れると、私はスマホを手にしたまま、へにゃへにゃと脱力した。