恋する耳たぶ
時折、すみません、とか、ありがとう、とか、聞こえるのは、周りの人達に応えているからだろうか……
ごめんなさい、匡さん……
でも、私……恥ずかしさのあまり、顔を上げられそうにありません……
そうやって、うれし恥ずかし茨の道を歩いたのは、10分か……いや、15分くらいか。
精神的な負担が大きかったから、本当はその半分か、そのまた半分くらいかもしれないけれど。
「あ、あそこだよ」
匡さんに言われて顔を上げると、雰囲気のいい小さな店と、そこから漏れるオレンジ色の灯りが見えた。
「会社の人に教えてもらった店なんだけど、けっこう美味しいって……」
いつものように優しく言った匡さんは、ふと言葉を切り、私を見つめた。
「紬未ちゃん……さっきの、あれ……本当?」
「え?」
匡さんの問いかけに、引きかけていた顔の熱が瞬時にまた再燃する。
私はその問いに答えようと、金魚のようにパクパク口を開け閉めして。