恋する耳たぶ
「…………」
結局、何も声に出せず、ただ頷くことで返事をした。
「紬未ちゃん……」
真っ赤になった顔をあげられない私の指先を握って、匡さんは胸を掴まれるような優しい声でささやいた。
「ありがとう、俺も……大好きだよ」
見上げた私を見つめかえした匡さんは、初めて会った時のように、ちょっと恥ずかしそうに笑って言った。
「大事にする」
他の誰にも言われたことのない言葉が照れくさくて思わず笑ってしまうと、匡さんは腕を引き、私の肩を抱いた。
「大事にするよ、本当に」
寄り添った匡さんの体の温度が、嬉しくて、くすぐったくて……幸せで。
なんだか気恥ずかしくて、映画の中の人にでもなったみたいな気持ちになる。
「今日の匡さん、なんだか外国の人みたい」
私の言葉にふいを突かれたような顔をした匡さんは、それをごまかすように私の肩から手を離して歩き出す。
「そうかな……」
「そーですよ。だって、その……あんなところで……」