恋する耳たぶ
・詐欺なの?

「……結婚?!」
「うわわ!真凡ちゃん!真凡ちゃん、しーっ!!」

大声を上げたのを止めようと、あわあわと手を伸ばす私を見て、ハッと気づいた真凡ちゃんは、さっと辺りを見回し、それほどの注目を集めていないことを確認すると、今度は犯罪者のように声をひそめて言った。

「昨日まで付き合ってないとか言ってたの……嘘だったんですか?」
「嘘じゃないよ!その…付き合おうとか、言われたことないもん……」

だんだんと声を小さくしていく私を、疑り深い目でじろじろ眺めて、真凡ちゃんは、ほうっと大きなため息をついた。

「まあ、そうですよね。そんな顔で嘘つけるような人じゃないですもんね、紬未さんは」
「そんな顔って、どんな顔?」

鏡が入っていないかと、バッグの中のポーチやポケットを探すけれど。

残念なことに、あまりマメな性格ではない私のバッグにそんなものは入っていなかった。

うちの会社のトイレには、おっきい鏡があるしね!
別に、私の女子力が低いとかじゃないよね!


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