恋する耳たぶ
・俺の弱点

俺がその、紬未ちゃんからのメールに気づいたのは、日も暮れかけた午後5時のことだった。

昨日の今日で、会いたい、なんて言い出せなかった俺へのタイムリーな天からプレゼントに、思わず天をあおいでガッツポーズをしてしまうと、背後から、声をかけられる。

「なんだよ、おまえ、珍しくガッツポーズなんかして」

ニヤニヤと笑う男くさい上司、猪熊さんの顔が近くにあることは容易に想像できたので、俺は振り返らないまま、手にしていた缶コーヒーに口をつけ、さりげなくスマホをポケットにしまう。

「いや、なんでも」
「いやいやいや!」

猪熊さんは俺から少し離れると、大げさな身振りで自分の驚きを表現する。

「いつもすました顔で、クールぶってるお前がさ、ガッツポーズ!イエス!!って!」

さっきの俺の10倍以上のテンションで大きくガッツポーズをした猪熊さんは、今度はガシッと肩を掴み、ゴリラのような野太い腕を回して来た。


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