恋する耳たぶ
そんな予定外のことはあったけれど、俺はきっちり定時で仕事を終わらせ、愛しの紬未ちゃんが待つ、待ち合わせ場所へと向かった。
そして見つけた昨日と同じコートに、少しだけ頬が熱くなるのを感じ、足を速める。
「紬未ちゃん」
声をかけると、彼女はいつもとはちょっと違った顔で俺を見上げた。
「こんばんは。お疲れ様です」
俺にかける声も、こころなしか固い雰囲気。
「うん……紬未ちゃんも、お疲れさま」
「……」
暗い表情でうつむく紬未ちゃん。
何か、あったんだろうか?
気になるけれど、この寒空の中、立ち話をするのもなんだろう。
「どこか入ろうか。紬未ちゃんも夕飯まだだよね?」
「はい」
昨日の今日だし、浮かれていた俺は違和感しか感じなかったが、紬未ちゃんにもいろいろとあるんだろう。
そう自分に言い聞かせて、近くにあった手ごろな店に、紬未ちゃんを連れて入る。