恋する耳たぶ

まだ、いつも通りとは言えないけれど、張りつめていたものが緩んだ感じに、俺も安心して、手にしていたビールをひとくち流し込む。

「来月あたり、一緒に行こうか」
「……え?」
「あ、その前に、紬未ちゃんの実家に挨拶しに行かないといけないね」
「え?!」

目を丸く見開いて、大きな声を出した紬未ちゃんは、ハッと手で口元をおさえ、キョロキョロと辺りを見回してから、もう一度、俺を見た。

「挨拶って……え?」

もう、すっかりいつもの紬未ちゃんだ。

嬉しくなって、思わず、紬未ちゃんに手を伸ばす。

テーブルの端っこにちょこんと置かれていた小さな手を握ると、既に赤くなっていた紬未ちゃんの顔は、一気にゆでだこ状態になった。

「昨日、OKしてくれたと思ってたけど……違った?」
「ちっ違わない……違わない、ですけど……」

親指の腹で紬未ちゃんの細い指を撫でながら、この薬指に嵌めてもらう指輪が必要だな、と考えていると。


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