恋する耳たぶ

でも、例えば、断られるにしても、手が震えてたなんて、紬未ちゃんにけどられたくない。

かっこつけとか、やせ我慢とか、言われても。

紬未ちゃんは優しい子だから、フラれた側が死にそうにショックを受けた顔なんかしてたら、きっと、後で、ものすごく自分を責めるに違いない。

そう思った俺は、ほっそりしてかわいらしい紬未ちゃんの指先を見つめたまま、どうにか気持ちを整え、そっと自分の手を引き抜いた。

「なんて言われたら……けっこうキツイんだけど」

へら、と精いっぱいのカラ元気で。

笑顔を作って、顔を上げると、紬未ちゃんは呆然とこちらを見ていて。

見開かれたその目は、今にもこぼれてしまいそうに涙の膜が揺れていた。



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