恋する耳たぶ
俺の頭の中で、今、ごめんなさい、と言われるならアレだろうという図式が浮かんでいるが、口にしたくない。
でも、口にしたくない以上に、彼女の口から聞きたくない。
「……紬未ちゃんが謝ることなんて何もないよね?」
迷った挙句のずるい言い回しに、うう、と小さく嗚咽をもらし、しゃくりあげる紬未ちゃん。
指先で目元を拭う仕草に、遅ればせながら、ポケットのミニタオルを差し出と、彼女はちらりと赤い目元をのぞかせ、小さな声で礼を言う。
こういう所がかわいいんだよなぁ、なんて思ってしまう俺は、本当にかなりの重症なんだろう。
本当言うと、俺もけっこう泣きたい気分なんだけど。
周囲の皆さんからのちょっと痛い視線が、そうもさせてくれない気がする。
いや、でもね。
皆さん、誤解しないでくださいね~?
俺、そもそも彼女のこと、泣かせたくなんかないんですから!