恋する耳たぶ

「はぁ……」

思わず小さなため息をもらしてしまうと、びくり、と体を揺らした紬未ちゃんが、ゆっくりと顔を上げた。

泣きぬれた瞳に、ちょっと赤くなった目元と鼻先が、小動物っぽくてかわいい。

さっきまでパニックだったはずなのに、初めて見る紬未ちゃんの泣き顔に、思わず笑みが漏れてしまった。

「……ずるいなぁ、紬未ちゃんは」

え?と言うように、きょとんと目を丸くした紬未ちゃんは、いつか見た、雪の中のオコジョに似ていた。


そんな顔されたら、何を言われたって怒れないよ。


惚れた弱みというか、惚れたら負け、というか……

俺はもう、この子には勝てないんだろうな。


仕方ない。


俺は腹をくくって、しゃくりあげ、まだしゃべれなさそうな紬未ちゃんに右手を差し出した。

「ねえ、紬未ちゃん」


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