恋する耳たぶ

「ありがとう、ございます……」

慌てた感じで言う匡さんの顔を見れないまま、私はできる限りのスピードで寝室に戻った。


洗濯済みの服に着替え、軽くメイクをして、仕切り直し。

寝室を出ると、テーブルについていた匡さんが、ちょっと困ったような顔で言った。

「紬未ちゃん、その……ごめんね?」
「匡さんは何も悪くないです……忘れてた私が悪いんですから」

そう、初めての、匡さんのおうちにお邪魔しているという状況に緊張して。

これから、どうなるの!?
私はいいけど!

覚悟はできてるっていうか、そうなっても……その、いいと思ってるし!

……とかいう煩悩で頭がいっぱいで、匡さんの一挙手一投足にドキドキして……

泊まっていけば?と言われて、お風呂をすすめられた時には、完全にもうそうなるもんだと思ってた。

匡さんは、まったくそんな感じじゃなかったのに。

おやすみ、って、寝室のドアが閉められた後、10秒くらいは呆然としてた気がする。

期待しまくってた自分が恥ずかしくて、なかなか眠れなかったの、匡さんに気づかれないようにしなくては……


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