恋する耳たぶ
「いや、でも……持ってこなくても良かったよね」
少し気まずそうに、目線を逸らす、匡さん。
「……嫌、ではないので大丈夫です」
まだ顔が熱いのはわかっていたけれど、ちゃんと伝えたいから。
私は顔をあげて、ちゃんと匡さんと目を合わせた。
「恥ずかしかっただけですから……ありがとう、ございます」
「あ…………そう……」
私の言葉を聞いた匡さんは、最初はちょっと驚いたような顔で。
だんだん赤くなっていく顔を隠すように、立ち上がって背を向けた。
「紬未ちゃん、コーヒーでいい?あー……そうだな。紅茶……はないから、その他だと、ココアとか……あとは……何かあったかな……」
何かをごまかすような、ちょっと焦っているような匡さんの耳は、ちょっと離れたキッチンにいても、真っ赤になっているのがよくわかった。
「ふふふ……コーヒーがいいです」
部屋中に満ちている香ばしい香りを胸いっぱいに吸い込んで、私はとても幸せな気分で言った。
「匡さん、大好き」