恋する耳たぶ

出会ってから、まだそれほど日は経ってない。

デートは何回かしたけれど、恋人たちがするようなアレやコレやは、まだほとんどしてなくて……

けれど、プロポーズされて、一緒に朝の時間を過ごしている。

順番が違うんじゃない?って言う人もいるかもしれないけれど、そんなのは人それぞれ。
みんな同じじゃなくたっていいんだから。

「……え?」

振り返った匡さんは、真っ赤な顔で。
あっけにとられたような顔でぽかんと口を開けたまま、数秒、私を穴のあくほど見つめた後で、小さく照れたように微笑んだ。

「…………うん」

好きだよ、とか、俺もだよ、とか。
映画みたいな愛の言葉はなかったけれど、匡さんの気持ちはちゃんと伝わって来た。

「……はい」
「ありがとう」

渡されたマグカップを受け取って、目を見合わせて。
私はとても幸せな気分で、コーヒーを飲んだ。

「おいしいです。とっても」

匡さんは何も言わなかったけれど、相変わらず、彼のステキな耳は真っ赤で。
とてもとても、かわいかった。


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