恋する耳たぶ
「前から思ってたんですけど。匡さんて……けっこう慣れてる感じですよね……」
「慣れてるって、何に?」
「いや、だからその……」

ちら、と見上げると、匡さんは本当に何を言われているのかわからない、と言った顔で私を見下ろしている。

「そういうのですよ……」
「……そういうのって?」
「…………もう!」

少しだけ首をかしげるように体を曲げていた匡さんの鼻をキュッとつまんで、言ってやる。

「そういう風にして……人をドキッとさせることです!」

口を尖らせてプイ、とそっぽを向くと、匡さんは、はあ、と大きく息を吐いて、困ったような声を出した。

「紬未ちゃんの方が、よっぽど俺をドキッとさせてると思うけど」
「えっ?!」

思わず振り向いてしまうと、匡さんは優しい苦笑いの顔をほんのり赤く染めて、きゅっと私の指先を握った。

「……今日は、紬未ちゃんの家に泊まってもいい、かな?」


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