恋する耳たぶ
もちろん、故意ではなく、偶然の、ラッキーな……いや、事故なわけだが、きっと、相手の女性からすればどちらでも同じことだ。
不快感をあらわにされるか、ナチュラルに距離をとられるか、どちらかだ。
そして、どちらにしろ、俺は嫌な思いをするだろう。
考えてもみてくれ。
別に、触ろうとは思っていないのに触ってしまい、寄りかかろうとは思っていないのに寄りかかってしまい、非難される男の気持ちを。
しかし、それも全て、思いもかけぬ出来事。
非難されることがわかっていたなら、大抵、そんなことにならないよう、どうにかするだろうから。
というわけで、俺は大抵の男と同じく、そんな事態にならないよう、防御策をとることにした。
世の中には、痴漢とかいう、公共の場所で女性を辱めることに楽しみを覚える輩もいるようだが、そんなクズはごく一部で、男という生き物の大半は俺と同じようなものなのではないだろうか。
今の日本には、身体的な弱者を守るルールはあるかもしれないが、健康で害のない男を守るルールは無い。