恋する耳たぶ
「……え……?」
匡さんの言葉が示す言葉がわからないほど、私は子供じゃなくて。
多分、真っ赤になっているであろう顔を隠すようにうつむき、小さく頷くだけ。
余裕のあるセリフなんかを吐くほど、慣れた大人にもなりきれてはいなくって。
握られた指先をきゅっと握りかえして見上げた匡さんの目の中に、私と同じ感情が揺れているのが見えた気がした。
きゅうっと胸の奥の方を掴まれるような、もどかしくて幸せな、痛みに似た感覚。
「……部屋、散らかってますけど」
「…………うん」
「……あ……飲み物とか、買い置きなかったかも」
近くのコンビニにでも……と、方向転換しようとすると、立ち止まったらしい匡さんに腕を引っ張られる形になった私は、おっと、とよろけそうになって声を漏らした。
「紬未ちゃん」
少し硬い声で呼ばれて見上げれば、さっきの苦笑いとは違って、真面目な顔をした匡さん。
「これ以上……おあずけされるのはちょっとキツイんだけど」