恋のはじまりは突然に
「冗談だ」

……冗談でも、そういうことは言うもんじゃないと思うんだけどな。

しかも〝冗談だ〟と言った顔は笑うこともせず、あくまで普通のトーンで……せめて冗談なら、ちょっとくらい笑えばいいのに。

「どんな子……だったんですか?」

初対面の人に普通は聞かないことだろうけど、この人が結婚を考えたくらい惚れ込んだ彼女はどんな人だったのだろうかと、純粋に気になり聞いてみた。

「……可愛かったよ。苦手な料理を俺の為に覚えてくれたり、年が離れていたって言うのもあるだろうけど、俺を困らせたくない思いからなのか、ワガママもそんな言われたことなかったし。今思えば、相当無理させてたのかもしれないな」

そう言った彼は、彼女のことを思って話したからなのか、切ない顔で悲しく笑った。

「蓮司さんと希望ちゃんって、どれくらい年の差あったのー?」

清美は奏多さんばかり見てると思ってたら、ちゃんと彼の話も聞いていたらしく会話に入ってきた。

年が離れていたと言っていたから、2歳や3歳ではないのだろう……と思いながら、彼の言葉を待った。
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