恋のはじまりは突然に
そんなことを悩んでる間に蓮司さんはお金を払い〝出るぞ〟と一言、言うと先に外へと出た。

店員さんに軽く頭を下げ、蓮司さんを追って外へ出ると、彼は空を見上げ真ん丸お月様をボーっと見ていた。

声をかけて良いものなのか悩む。だって彼が見つめているのは、きっとお月様を通り越して見ていた希望ちゃんだと思ったから……。

「なぁ」

突然蓮司さんの言葉がして、目を合わせると彼の表情が真剣で私は目を逸らすことが出来なく、次の言葉を待った。

「嫌だったら断ってくれて構わない。もうちょい一緒にいてくんねぇかな」

流されないつもりだった。ちゃんと断るって決めてたのに。

彼の雰囲気や言葉に完全飲み込まれ、頭よりも先に身体が動いていた。

黙って頷いた私に彼が近付いてくると〝ありがとう。傷付けたりはしない、約束する〟と言って、私の腰に手を回した。
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