恋のはじまりは突然に
目的の場所に着いたのか、タクシーが路肩に寄せ止まると蓮司さんはスマートに支払いを済ませ、私の手を握り直して外へと降りた。

辺りを見渡すもホテルらしきものはなくて、首を傾げた。

「なに?」
「え、いや……ここどこかなっと思いまして」
「俺が住んでるマンションだけど」

家……なんだ。ということは、彼がいなくなるんじゃなくて私の方が事が終わったら出て行けってことなのかと思いながら蓮司さんに手を引かれ部屋を目指した。

「ソファーにでも座っとけ。寒いだろ、今あったかいもんでも入れる」
「あっ、いえ、お構いなく……」

部屋に入ると蓮司さんはキッチンのほうへと行ってしまった。

マンションは5階建てで、彼の部屋は最上階の5階。

間違いなく私なんかが住んでるアパートよりも広くて綺麗。

あまり人様のお家をジロジロ見るもんではないけれど、ついつい見てしまう。

そして私の目はテレビがある台の上で止まった。
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