恋のはじまりは突然に
「えー、怖っ!普通さ、嫌でも舌打ちする?!ないわー」

なんて、清美が言うもんだから、舌打ちした男の隣にいた男が、両手を合わしバツが悪そうな顔をして、私たちに謝ってきた。

「ごめんねぇ、コイツさ彼女にフラれたばっかで機嫌悪りぃの。悪く思わないでね?」
「おいコラ、余計なこと言ってんじゃねぇよ」
「はいはい、分かったから。キレないの。みんな怖がるからね?ってことで、今日はごめんね?」

あぁ……。それはなんと言うか……。お気の毒に……。

さすがの清美も苦笑いをして、宥めていた彼のほうに会釈をしていた。

〝なんかさ、かわいそうだね……〟と、清美がコソッと言ってきて、私はただそれに頷くことしか出来なかった。

私たちが座ってる場所は、掘りごたつで、彼らが案内された席は、私たちの斜め左のカウンター席に案内されていた。

掘りごたつかカウンターか選べるんだけど、私たちはいつも迷うことなく掘りごたつにしてしまう。

なんかさ、家にいるみたいで、カウンターより落ち着くんだよねぇ〜。

でも今回に限っては、彼らがカウンター席にしちゃったもんだから、微妙に席が近くて、耳を澄ましたら聞こえてきちゃいそうなんだけどねぇ……。

店員さんもそこは気遣ってくれたら良かったんだけど……。
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