恋のはじまりは突然に
「こんなもんか」

肩まである私の髪を丁寧に乾かしたあと、蓮司さんは自分の髪を乾かすと、元あった位置にドライヤーを戻した。

「あ、ありがとう……ございます」

身長160センチ弱の私が見上げるくらいだから、175センチ〜180センチはあるのかもしれない。

彼に乾かしてもらったことへの感謝を告げると、蓮司さんは〝あぁ〟とだけ言ってリビングへと歩いて行った。

慌てて彼を追いかけると、蓮司さんはリビングの明かりを消し、その隣にある部屋へと入って行った。

もう後には戻れない……そう覚悟を決め、その部屋のドアの前に立った。

ふぅ……と息を吐いて、一つ足を踏み入れる。

「おいで」

上体を起こしベッドの背もたれに背中を預けた蓮司さんに呼ばれ、私は彼の隣へと移動した。
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