恋のはじまりは突然に
「泣かねぇよ、女の前で泣くかよ」

やっぱり、蓮司さんにとって私はただの関係のない女でしかないから……そう言われても仕方ないんだろうな。

「でも、一つだけ聞いてくれるか?」
「も、もちろんですっ」

頼ってくれるのが嬉しくて、顔を上げたい気持ちを我慢して、蓮司さんの言葉を待った。

「俺さ、アイツのことすげぇ好きでさ。結婚を考えたのもアイツだけだったのに……俺、これからどうやって生ていけばいいか分かんねぇんだよ。なぁ、俺はどうしたらいい?」

そう言った蓮司さんの身体は少し震えていて、何か答えなきゃと思うも、ギュッと胸が締め付けられて、私の方が泣きそうになってしまった。

「ごめんな、こんなこと言われても困らせるだけだよな。ダメだ、相当弱ってんな俺」

再び蓮司さんの言葉にフルフルと首を横に振ることしか出来なくて、そしてやっぱりこの人のことが好きだと……でもこれだけ彼女のことを愛してる人を自分に振り向かせるなんて、恋愛初心者みたいな私には到底無理なことで、気持ちを伝える前に私も失恋しちゃったんだ……と思うと、とても悲しくて苦しかった。

「好きで……いても、いいと思います」

目の前に私という存在がいても、抱こうともしないんだもん、どっちにしても私に脈はない。
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