恋のはじまりは突然に
「一回フラれただけじゃないですか、指輪も渡してないんでしょう?だったら、渡しましょう?希望ちゃんだって、何か心の変化があるかもしれませんし」
「そういうもんか……?」
「少なくとも私なら、考え直します。だってこれだけ愛されてるんだもの。きっと希望ちゃんだって、蓮司さんの気持ち分かってくれますよ」

自分の気持ちに気付いてしまった今、顔が見えないから言ってるものの、こんなこと目を見て直接なんて絶対に言えない。

「蓮司さん、私帰ります。希望ちゃんのこと諦めずにいるのに、私なんかといるところを万が一見られたら困りますから」

彼女はここにいたんだから、荷物を取りに来る可能性だってある。

その時に私がいたら……ましてやこんな格好、彼女のパジャマなんか着てたら誤解するに決まってる。

本当は蓮司さんの傍に、居たかったけれど、私はただの通行人に過ぎない人だから……。

今ならまだ間に合うよね。気付いたばかりだもん、もうこの人に会わなければ、なかったことに出来るはずだよ。

そんなことを考えながら、抱きしめられていた身体を、自分からそっと離れた。

けれど……
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