恋のはじまりは突然に
「希望……」

電話が希望だと分かるも、焦りの気持ちを抑え、ゆっくりと携帯を操作して電話に出た。

『蓮司……?』
「あぁ」
『あのね、今日荷物取りに行きたいなって思うんだけど……』
「そうか、ちょうど今日休みだから取りに来ていいぞ」
『そっか、分かった。じゃあこれから行くね』

昨日ぶりに聞いた希望の声。女は振った男のことなんて、すぐに記憶から抹消できるらしい。

だからなのか希望の声は、どこか吹っ切ったような……昨日の声とは明らかに違っていた。

あの子は希望のことを好きでいてもいいと言っていた。

指輪も渡せとも言っていた。一度振られただけじゃないかとも。

だけど、今の声のトーンで分かるよ。

希望は俺をフったことを後悔していないって。

俺が何か言ったところで、アイツは戻っては来ない。
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