恋のはじまりは突然に
昨日使ったカップとか、希望のパジャマとか、バスタオルとか、別に片付けても片付けなくても、希望が見つけたところで責められることもないとは思ったが、特にすることもなく、片付け始めた。

「ん?」

部屋の中を動いていると、テーブルにメモが置いてあり、それを手に取った。

『おはようございます。グッスリ寝ていらしたので、声掛けずに帰りますね。鍵の場所分からなくて、そのまま帰ってしまうこと……ごめんなさい。れんじさんに出会えて良かったです。 結奈』

メモ帳とペンは持ち歩いているのだろう、絶対俺は買わない可愛く描かれたクマのメモ紙に綺麗な字で読みやすく書かれていた。

「出会えて良かった、か」

少なくとも嫌な思いはさせなかったと捉えて良いのだろうか。

そんな彼女の声や顔を思い出しているとチャイムが鳴り、紙をパンツのポケットにしまうと玄関へ急いだ。

「蓮司……」
「……おぅ」

別れるとこんなに、よそよそしくなるもんだったか。
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