恋のはじまりは突然に
2年は一緒にいたから、その期間は失恋をしていないわけで、失恋した時の悲しみや苦しみを忘れてしまっていた。

「上がれば?荷物取りに来たんだろ」
「……うん、お邪魔します」

俺の言葉に希望は頷くと、部屋にあった彼女の荷物を次々と持ってきた袋に入れ始めた。

それを俺はただジッと見つめていた。

好きな男はどういう奴なのか、どうして俺じゃダメなのか、指輪を見せれば帰ってきてくれるのか、色んなことを頭で考える。

けど、タイミングが掴めず、ただ彼女を見ていることしか出来なかった。

ある程度終わったのだろう、希望はゆっくりと俺の方を見た。

「終わったのか」
「うん……」
「なんか飲んでくか?」
「うん……」

とりあえずはすぐに帰らないらしい。

俺はすぐさまキッチンへと移動し、希望が好きだったカフェオレを作るとテーブルに置いた。
< 39 / 84 >

この作品をシェア

pagetop