恋のはじまりは突然に

〝ねぇ、店変えない？〟と、清美にコソッと提案してみたんだけど〝いや、注文したばっかじゃん！これからゴハンくるのに帰れるわけないでしょ？〟と言われ、早くこの場から去りたかった私はゴハンのことなんて頭からスッポリと抜けていて……仕方ないのでこの場にいることにした。

「んでぇ？希望ちゃんに何て言われたのさ」

案の定、彼らの声が聞こえてくる。私も清美も何故だか、お互い喋ることをやめて、ビールを飲みながら耳を傾けて会話を聞いていた。

〝希望（のぞみ）ちゃん、だって！〟と、ワクワクした顔の清美に〝やめなよ、人の話聞くの〟と自分のことを棚に上げて清美を注意すると〝何よ、結奈（ゆな）だって聞いてるくせにー！〟と案の定思っていた言葉が返ってきて、私たちはまた黙った。

「他に好きな男が出来たんだと」

フラれたという男の言葉が終わると同時に〝ぶっ！〟という汚い音が。

「ちょ、清美！汚い！吹き出さないでよー！」
「いやー、ごめんごめん！」

清美が彼の話に吹き出し、私たちが通常の声で会話していると、隣からものすごい黒いオーラが漂っていて、チラッとソレを見た。

「わっ、」

ビックリして声を上げると、腕組みをして片眉を上げた、希望ちゃんの元カレが立っていました。