恋のはじまりは突然に
ボーっとしていても、今日は意外と時間が経つのが早くて、すぐにお風呂が沸いたとお知らせがあり、そそくさと湯船に浸かることにした。

結構な時間、入っていたと思う。出る頃には、指がシワシワになっていて、自分の指を見て笑ってしまった。

「蓮司さん、何してるかな……あの居酒屋に行ったら会えるかな……」

昨日の今日だもん、会えるはずがない。

昨日だって、たまたま出会えただけ。そんな都合の良いことなんか起こり得ない。

そう頭では分かっているのに、どこかで期待してしまっている自分もいて。

「別に飲みに行くだけだもん」

自分一人しかいないのに、誰かに言うように言葉を吐き出し、夕方まで家のことをしてしまおうと頭のスイッチを切り替えた。
< 45 / 84 >

この作品をシェア

pagetop