恋のはじまりは突然に
「お前、泣きすぎ」
「だってぇ……」

本当にこんなことが起こると思わなかったから、ただただ驚きと嬉しさで涙が止まらなかった。

そんな蓮司さんは困った顔をしながら小さく笑った。

「そんなに泣かれたら、これ渡せないだろ?」
「えっ……?なんですか……?」

渡せないってなんのことだろう?と、泣きながら蓮司さんのことを見ると彼の手には、さっきまでなかった小さな箱があった。

「あのさ」
「……はい」

蓮司さんの声のトーンが低くなり、ドキドキしながら返事をし、彼の言葉を待った。

「正直言うとさ、俺もフラれたばっかだからアイツのこと完全吹っ切れたかって聞かれたら、吹っ切れきれてない。けど、この数日結奈のことだけを考えてた」

吹っ切れきれてないのは当然だと思う。だって蓮司さんは結婚をするつもりで指輪だって購入してたんだもん。

それを渡す前にフラれたんだ。そんなの、この数日で吹っ切れる方がすごいと思う。

そんなことより、私のことをこの数日考えてくれてたことの方が数倍も嬉しかった。
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