人魚姫の涙
「あれ? 成也、今日学校なの?」


眠そうにパンをかじる俺を見て、リビングに現れた紗羅は首を傾げた。


「ん? あ~なんか補習」

「ほしゅう?」

「そ、ほしゅう」


ミーンミーンとセミが鳴く真夏の空。

入道雲が空に大きく広がり、海には海水浴に来た人で賑っている。

外は灼熱地獄で、何もしなくても汗が滲み出てくる。


眠気眼で憂鬱な気持ちのまま、ジリジリと陽炎のように揺れる外の景色を見つめる。

すると、補習の意味をようやく理解したのか、急に目を輝かせて紗羅は俺に詰め寄ってきた。

慌てて体を仰け反らせるも、紗羅は構わず俺との距離を縮めて口を開いた。


「私も行く!!」




夏休みも残り半分だ――。
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