人魚姫の涙

「顔、にやけてるぞ」


消えて行った紗羅の背中を見ていたら、急に背中から声がした。

驚いて後ろを振り返ると、呆れ顔の見慣れた顔がそこにあった。


「ビックリした~。なんだ和志か」

「相変わらずゾッコンだな」

「そんなんじゃね~よ」


ニタニタと笑いながら俺の頭をガシガシと撫でまわす和志の手を振り払って、講義室へと急ぐ。

恥ずかしい所を見られたと思い、バツが悪くなった。


「順調なんだ?」


講義室について適当に席に着くと、和志が頬杖をついて、こっちに含みのある笑みを飛ばしてくる。


「ん? あ~。まぁな」

「その様子だと、もうあの子の事は抱いたんだ?」

「ん~まぁ、な」

「いいねぇ~、あんな美女を抱けて」

「好きな女なら、誰でも可愛いだろ」


俺の言葉にハァと深く溜息をついた和志。

不思議に思い隣に視線を向けると、やれやれといった様子で不敵に笑う和志がいた。


「お前がどうして、モテるのか分かった気がする」


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