人魚姫の涙
「あ、成也!」


俺の姿に気づいた紗羅が、いつもより覚束ない足取りで俺の元へと駆け寄ってきた。

その度に揺れる髪やドレスが、あまりにも美しかった。


「どうかな?」


茫然と立ちすくむ俺の前で、ニッコリと微笑んでクルクルと回てみせる紗羅。

そんな紗羅の後ろで、目を輝かせている塩谷がいた。


「すっごい可愛い~! 私の想像していた通り!」

「ふふふ、花畑のお姫様みたい~」


キャッキャとはしゃぐ2人を見て、ようやく現実に戻された俺。

重たい口をようやく開けた。


「い...…いいじゃん」

「本当!? お姫様みたい!?」

「うん」


コクンと頷くと、紗羅は嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。

相変らず無邪気なその姿に笑みが零れる。

クイーンというより、プリンセスだな。

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