人魚姫の涙
その笑顔に自然と笑みが零れた。
すると、紗羅はギュッと俺の手を握った。
そして、180度に広がる観客みんなに笑顔で手を振り始めた。
「可愛い~!!」
「成也~!! 紗羅ちゃん~!!」
「こっち向いて~!!」
鳴り止まない歓声の中、俺達2人は何度も顔を見合わせて笑っては手を振り続けた。
まるで、芸能人にでもなった気分だった。
隣で楽しそうに笑う紗羅。
俺の顔を見る度に、照れ臭そうに笑う紗羅。
歓喜の声に交じり自分の名前を呼ばれて、応えるように笑う紗羅。
どの姿も輝いていて、目が離せなあった。
「凄いね、成也!」
「あぁ」
楽しそうな紗羅を見て、俺も自然と頬が緩む。
幸せだと、心から思った。
満月の夜。
数えきれない人の中で。
王子と姫は結ばれた――。