人魚姫の涙
「楽しかったね~」
いつもの堤防で今日の興奮を分かち合う俺達。
ショーは大成功で、あの後いろんな人から写真をせがまれて逃げるのに大変だった。
「みんな成也と写真撮りたがってたのに、よかったの?」
「いいんだよ」
実際みんなが欲しかったのは紗羅の写真だろうけど。
当の本人は全く自分の美貌に気づいていない。
呆れる俺の隣で、紗羅はご機嫌に鼻歌を歌いながら海を見つめている。
そして、夢心地な様子で天を仰いだ。
「今日は夢が叶ってよかった~」
「夢?」
「うんとね。私、お姫様みたいなドレスを着て、成也のお嫁さんになる事がずっと夢だったの」
そう言って、ニッコリと笑った紗羅の言葉に頬が赤くなる。
だけど、その瞬間、遥か昔の記憶が蘇る。