人魚姫の涙
しばらく泣き止まない紗羅を、俺は子供をあやすように背中を優しく叩いた。
そうやって、しばらく抱きしめていると紗羅が不意に声を上げた。
「成也」
「ん?」
ゆっくりと俺の体から離れて、瞳を持ち上げた紗羅。
ポタリと大きな瞳からダイヤのように輝く涙が頬を伝って落ちた。
「でもね、本当の話はここからなの」
その涙と共に落ちた言葉に、瞳が揺れる。
え? と首を傾げる俺から紗羅は目を離さない。
「本当の...…話?」
「そう。私達の運命の話」
そう言って、紗羅は再びゆっくりと話し出した。
王子様と人魚姫の悲劇の様に――。