人魚姫の涙

静かな部屋に消えて行った言葉。

だけど、その言葉を理解する事なんて出来ない。

だって、今。

今なんて言った――?


「――…え」


困惑する俺の目をじっと見つめる紗羅。

だけど、ふと視線を下げて、徐にポケットの中から一枚の写真を取り出した。


「日本に来る前、パパの部屋でコレを見つけたの」


目の前に出された写真に目を向ける。

カナリ年期が入っていて、少し色褪せている。

でも、その中に写る4人の顔はハッキリと分かった。

大学生くらいの、4人の男女―――。


「私の両親と、成也の両親だよ」


紗羅から渡された写真に目を落とす。

そこには、確かに若い頃の母さんと、紗羅のおじさんが映っていた。

そして、その隣には。


「これは、俺の父さん――?」


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